49 NORIKO
私は、10年間技術系として働いてきた。働いてきたものの、「研究」が好きになれずにいた。周りと比較しても、自分は、あまり仕事ができているとも思えなかった。周囲も男性が多く、思考を男性化していかないとやっていけないこともあった。
外からみたら、すごく恵まれていたと思う。正社員という身分。研究という仕事。つきたくてもつけない人だっているのだ。
でも、このままずっとこの環境で好きになれない「研究」を仕事としていくなんて、耐えられない気がした。「現状を何とかしたい」、「もっと自分に合った仕事があるのではないか?」そう思いながら、少しも動けずにいた。
仕事が合わないと感じ始めてから、転職したいと漠然と思い始めた。しかし、自分が何をしたいのかがわからず、転職活動を始められない状態だった。
そんな状態が1年ほど続き、自分1人では状況を打開できないことを悟り、転職活動を応援してくれるコーチをお願いしたいと考えるようになっていた。コーチングを受けるからには、できれば女性で自分とは異なるタイプのコーチがいいと思っていた。
たまたまインターネットで、Atsukoさんの『ひとみずむ18』を読み、自分とよく似た状況のAtsukoさんが、半年でHappyな状態に変化していくのを見て、堀口コーチにお願いすることにした。
堀口コーチにお願いしてから1年5ヶ月。動けなかった私も変化できた。
今は、仕事が楽しくてしょうがない。好きなこと、興味があることを仕事に出来るということは、本当に幸せだと感じている。
今得られているHappyな状態は、堀口コーチによる「表面的な結果を追求するのではなく、体の中からじわりじわりと効いてくる漢方薬的なコーチング」だからこそ、得られたものなのだと思う。
やりたいことが分からなかった私が、どうしたらやりたいことに気付き、そのあと、どんな風に感じ、考え、行動していったのか? なぜこんなに願いが色々と叶ってしまったのか? 私自身よくわかっていない部分があり、こうして『ひとみずむ』を書きながら、この1年5ヶ月を振り返ってみたいと思う。
2010年3月、最初に対面コーチングを受けた。
「やりたいことは何ですか?」、「好きなことは何ですか?」と堀口コーチに聞かれたとき、自分の中で「○○です」と自信をもって言えるものが、無かった。
「○○が好き」というものが無いことに薄々気づいてはいたが、見えないふりをしていた。自分と向き合わないといけないことに気づかされた。
自分の欲求についても、あまりにも話せなかった。それでは、普段の生活はどうしているのかということで、身近な衣食住の話になっていった。
洋服の話になったとき、堀口コーチが「欲しい洋服がいっぱいありすぎて、毎日欲しいな、買いたいなと思っています」と言ったことを聞いて、本当にびっくりした。
自分は、どんな洋服が欲しいのかわからなくなり、買えない時期が2~3年くらいあったのだ。仕事で必要だから、友達の結婚式だからなど「必要な理由があるもの」しか買えなかった。ショッピング自体も楽しみというよりは、必要に迫られて行くような感じだった。自分の楽しみのために買うという行為は、無駄遣いをしているという感覚だった。
コーチングの後、「洋服を買いに行ったらどうですか?」と、堀口コーチから言われ、「そんなこと言われても……」と思いながらも、半ば渋々銀座に行ってみた。買い物は思ったよりも楽しく、久しぶりに「楽しい」という感覚を、味わった気がした。
こんな風に、やりたいことを抑え、「好きか嫌いか」よりも「必要かどうか」で物事を考え、選択してきたので、自分が何を好きなのかがよくわからない状態になっていた。
例えば、習い事をしていた料理や英会話。主婦にとって料理は必須で、おいしく出来た方がよい、英語力は仕事に必要、と考え時間を費やしていた。
また、土日も「To Do リスト」を作成して、やるべきことを片っ端からやっていくような生活をしていた。やるべきことが全部終わらないとイライラし、そんな自分を嫌いになる生活を送っていた。
やりたいことを見つけたり、したりするためには、時間が必要だと思ったが時間がない。
「平日は時間がないし、土日はToDoリストのやらなくてはならないことが多くて、やりたいことをするのにまわせる時間がないんです」と言う私に、堀口コーチは「えーー! 土日もToDoリストですか! やらなくてはならないことは、本当に必要なことですか?」と言った。
確かに、やらなくてはならないことは主に家事であり、やらなくても誰かに迷惑をかけることはなかった。掃除の行き届いた部屋で、手料理を旦那に食べさせてあげたいと思う半面、そこまでする必要はないかもしれないと思う自分もいた。
「必要なことはTo Doリストがなくてもやりますから、大丈夫ですよ」という堀口コーチからの勧めもあり、「必要かどうかよりも、好きかどうか、やりたいかどうかを優先させる生活をするようにしよう」と考え、土日の「To Do リスト」を無くしてみることにした。
今までずっとあったTo Doリストを作らなくなるということは、不安だったため、じょじょにリストを作ることを止めてみた。
最初はとにかく妙な感じだった。落ち着かないのだ。紙に書かなくても、頭の中にリストが残っているため、思い出しながら必要なことをまずやっていく感じで、あまり変化を感じていなかった。
しばらくすると、本当に必要なことだけをやり、必要だと思っていたけど、実はあまり必要でなかったことをやらなくなった。やらなかったことで困ったことは、見事に1つもなかった。リストをチェックして、出来ないと凹むこともなくなり、気持ちも楽になっていった。
また、セッションの宿題で「こうでなくてはいけない」と思っていることを書き出してみることになった。
驚くことに、20個以上のリストができた。自分に対して減点法(=出来て当たり前で、できないと自分は、なんてダメ)で、考えてしまう思考パターンがあることに、気づいた。
いつも、必要かどうかが判断基準であったため、「……すべき」→「……じゃないと意味がない」という風に自然となって、自己否定のサイクルにハマっていたことに気づいた。
例えば、軽い気持ちではじめたランニングも、「毎週走らないと意味がない」、「毎週走らないと走れなくなる」、「途中でやめるなんて根性ない」と考えるようになっていた。そんな風に考えることで、走ることがだんだん苦痛になっていった。
そもそも、その考え方は子供の頃からずっとあったことにも気が付いた。
「大人になったら○○しよう」、「時間ができたら××しよう」。そうやって必要なことを先にやり、やりたいことを先延ばしにしながら過ごしてきたので、いつの間にかやりたいことがわからなくなってしまっていたのだ。
この話を堀口コーチにしたところ、「過去からやりたいことがみつからないなら、これから見つければいいんですよ。ゆっくりしてみたらどうでしょう。ゆっくりしないと、やりたいことがでてきませんよ」との提案があった。
セッションの1stステージとして、自己否定をしてしまいがちのサイクルに陥る、自分の考え方の見直しができた。
それからのセッションでは、毎回、自分の考え方の癖で自分が疲れてしまうことを、テーマとして取上げて話してきた。その結果、自分の考え方がどのように形成され、今の自分にどんな影響を及ぼしているのか、客観的にみることができるようになった。
To Doリストをやめてから、土日に時間ができるようになったため、本来の目的である「転職」や「やりたいこと」について、考えるようになった。とりあえず、近所のエクセルシオールカフェに行って、ゆっくりしてみることにした。
最初は、カフェラテを飲み終わってしまうと居心地が悪くて仕方なかった。今まで自分と向き合うことをしていなかったため、何をしてよいのかさえ、わからなかった。
「やりたいこと」について、ぼーっと考えていても考えが堂々巡りし、まとまらなかった。
ふと、中学生のときに、ノートにいろいろ書いて気持ちを整理してきたことを思い出した。
それから、カフェで手持ち無沙汰なこともあり、ノートを持ち込むことにした。今週の振返りから始めた。起きた出来事について考えたことや、映画や本を読んで感じたことなど、自分の気持ちをノートに書き出してみることにした。
ノートに自分の気持ちを書き出すことは、自分にあっていたようだ。しばらく続けているうちに、自分と向き合うエクセルシオールカフェの時間がないと、逆にイライラしてしまうようになっていた。
最初は、「○○をした、楽しかった」という記述が多かった。だんだんと「映画のこの部分に特に感動して、きっとこれは自分の中に**という気持ちがあるからと思う」といったように、自分のことを、より深く理解できるようになってきた。
自分と対話することで、自分の価値観や強みについて気づくようになり、自信もついてきたように感じた。
それでも、まだ興味のあることのイメージが湧かなかった。そんな私に、堀口コーチから提案があった。
「どんな職種があるのか、自分の中ではあまりイメージができていないようだから、『やりたいこと』を見つけるために、自分の世界を広げる必要があるし、そのためにも、いろんな人に会った方がいいですよ」と。
それから、知らない人に会う機会があれば、積極的に出かけていくようにしてみた。
また、コーチングを受けているうちに、コーチングに興味を持ち、習うようになった。ちょうど、コーチングのワークショップが開催されることになったため、参加することにした。
ワークショップの後、飲み会が開催されることになった。ワークショップ自体は得るものも多く楽しかったが、自分とはタイプの異なるメンバーが多く、飲み会は正直やめておきたい気持ちだった。
しかし、「いろんな人と話しをしてみると堀口コーチと約束したし、飲み会が合わなくてしんどかったら、途中で帰ればいいや。どうせ2度と会わない人たちだし……」と思いなおし、若干後ろ向きな気持ちのまま、参加することにした。
飲み会の場で、「コーチングをみんなで勉強する機会があるといいですよね」という趣旨のことを言ったところ、その場にいた人は賛同してくれた。
さらに、その中にいた長老的な紳士に、「そういうことは、言い出した人がやるんだよ」と言われ、飲み会の残金5000円を軍資金として渡された。
そのときは、多少酔っていたため、5000円を受け取ってしまったが、家に着いてよく考えると、大変なことになってしまった気がした。500円なら、適当に募金して終わりにしても、それほど心は痛まないが、5000円はかなりの金額だ。勉強会をやるしかなさそうだった。
仕方なく、早めに終わらせたい一心で、まずは参加者のメーリングリストを作成した。当然、初めてのことだったので、半日以上PCと格闘していた。
実際にメーリングリストを作ると、ワークショップに参加していただいた方のうち、十数人がメーリングリストに参加してくれた。
そして、週に2~3通定期的に投稿があり、メーリングリストはしっかりと機能していった。
メーリングリストに参加してくれた方に感謝され、やってよかったと感じた。
初めてのことをやり遂げた達成感と、参加者からの感謝の言葉で、「やりがい」ってこういうことなのかなと何となく思った。
さらに、3ヶ月後に勉強会を開催したところ、10人の参加者が集まってくれた。
1人も参加してくれなかったらどうしようと考えていただけに、本当に大きな自信になったし、参加してくれた人たちに対して、すごく感謝の気持ちが湧いた。
人様の役に立っている、自分のやったことが感謝されるということは、本当に久しぶりの経験だった。自分の原動力になることを再確認した。
セッションの2ndステージは、堀口コーチに提案された「ゆっくりすること」と「自分の世界を広げるためにいろいろな人に会うこと」について、まじめに取り組んだ。
いつもより、すこし勇気を持って、少し気が進まないなぁと思っても、参加してみることで、道が開けていくことを感じた。本当にちょっとの勇気だった。
そして、私にできることで人に喜んでもらえたことが自信につながった。
セッションを受けながら興味を持ったコーチングは、学ぶことで、自分の考え方や捉え方も変わってきた。学んだことがすぐに実践として役立っていった。
苦手な同僚がいたのだが、「彼はどんなタイプなのか?」、「考え方の特徴は何だろう?」と観察していくうちに、「口調が強いのはコントローラーの要素が出ているだけ」、「言っていることがコロコロ変わるのは、プロモーターが強いから」ということが冷静に分析できるようになった。以前に比べて人間関係が楽になってきた。苦手な人の言動が研究対象になっていたため、言っている内容だけを冷静に分析して受け止めることが出来るようになった。
また、今まで上司から「考えていない」と言われることが多かったのだが、「考える」とは「さまざまな視点で問うこと」なのだということを、今更ながら理解した。
仕事を進める上でも、「問題になりそうなのは、どこだろう?」「そのときは、どういう対処をしようか?」と、先をしっかり考えるようになった。
プレゼンをする際は、「部長の視点からは、どう見えるだろう?」「部長からみて、突っ込みたくなるところはどこだろう?」と、より具体的に考えるようになった。
そうこうしているうちに、半年が過ぎていた。転職活動は全く進んでいなかったが、行動することで、自分の強みや考え方の特徴を理解でき、また自信もついてきた。
だんだん、やりたいと思うことも見えてきた。ストレングスファインダーからわかった自分の強み(調和性、共感性、達成欲、成長促進、個別化;ストレングスファインダーの本によると共感性と成長促進と個別化は、教師に多い資質とのこと)と、勉強会での経験から、人材育成の仕事に就きたいと思うようになってきた。
人材育成なら、どの部にあたるのだろうか考えてみた。人事部の人材育成部門かなと、頭に浮かんだ。
そこで「人材育成をしてみたい」と堀口コーチに話したところ、意外な質問をされた。
「今の職場でマネージャーになれば、人材育成も自然とすることになりますけど。転職しないでも上にあがるとできますね。それでも他に何かやりたいことは、ありますか?」
それはそうだと思う反面、この問いにすぐには答えられなかった。マネージャーになることは考えたこともなかったし、マネージャーの仕事が、人材育成であるという考え方が、浮かんでいなかったからだ。
この質問をされたことで、逆に人材育成部門(人事部)で自分のやりたいことが、あまりにも漠然としていることに気づいた。「これだ!」と、思ったのに…。
また、やりたいことがわからなくなってしまった。
色々と悩みながらも、転職活動は少しずつ進んでいた。
堀口コーチのコーチングの特徴は、背中を押すというよりも、行動のハードルを下げてくれることだと思う。
転職活動も、何から手をつけてよいのか、よくわかっていない私に提示されたことは、「履歴書を買ってくる」「トラバーユを買って、見てみる」ということだった。「これなら自分にも簡単にできる!」そう思えることで、行動が起こしやすかった。
まずは、なんとか履歴書を書き、1社目にエントリーしたところ、履歴書で落とされてしまった。それならば、自力でエントリーしていくよりも、転職エージェントを活用した方がよいかもしれないと思い、転職エージェントで面談をお願いした。
転職エージェントの担当者は、現在は不況なこと、人事部系の募集は少ないこと、10年間技術系でやってきた私には技術系転職もしくはコンサル、もしくは技術と繋がりのある部門(営業技術とか)なら紹介できること、もし自分なら社内転職を目指すことを、話してくれた。
たった1度の面談では納得できず、再度面談してもらった。だが、人事系への転職は難しいということを再認識する結果となった。
転職先はまだ決まらなかったが、色々とフィードバックを頂くこともでき、段々と自分のやりたいことが見えてきている気がした。
セッションの3rdステージ、「自分の強みを明確にして、やりたいことをみつける」に到達しつつあった。
この頃、会社で上長面談があり、「異動したい」と上長に伝えることが出来た。
今まで、「仕事が合わない自分」を自分の中で認めたくなかったことと、仕事が出来てないのに異動したいというのは逃げている、自分に負けているような気がして、言い出せなかったのだ。
しかし、この半年、会社以外での活動を通して、自分に自信がついてきていた。
だから、このまま好きでないことを仕事として続けていくことは、もうやめたいと決心でき、伝えることができたのだと思う。
上長には、希望部門として、人事部を挙げたところ、それ以外の部門も候補として挙げてほしいと言われた。漠然とではあるが、「技術ではない部門がよいこと」、「営業や企画部門も考えていること」を伝えた。
その後、会社から2度ほど、異動してよいのかの確認があったが、迷いはなかった。
会社に異動希望届を出すと、不思議と気持ちが落ち着いた。人事を尽くして天命を待つ気分だった。後は、「神様が自分に合ったところに異動させてくれるはず!」そんな風に思っていたし、なぜだか焦りも迷いも不安も全く無かった。
携わっていたプロジェクトがうまくいかなくなっており、人員削減のため次々にメンバーが異動していた。それを見ていると、異動はおそらく確実に出来るはずだからと思えたのだ。
そして、異動した後に仕事をうまくできるように、仕事の基礎力をつけておこうと考え、そちらに注力するようにしていた。
セッションの4thステージ、「やりたくないことを辞める決意」と「上長に意思を伝えること」も気づいたら出来ていた。
2011年になったあたりから、12週間にわたり、以前受講していた話し方講座のアシスタントをすることにした。
アシスタントの仕事は、受講生の前でお手本を示したり、受講生にアドバイスをしたりすることで、成長の手助けをすることだった。
コーチングセッションの中でも、どのようにしたら、受講生の力を引き出せるか、堀口コーチと考えた。そして、実際に実行してみると、上手くいった。
やがて、なかなかうまくできなくて困っていた受講生からは、感謝されるようになった。
アシスタントの仕事を通して、人から感謝されることが嬉しくて、自然に自分の周囲の人に何かをしてあげたいという気持ちを持つようになっていった。
ちょうど、妹の結婚式が6月に予定されていたため、ウエルカムベアを作ることにした。
今まで、妹に対しては、誕生日にメールを送るくらいしか、したことが無かったため、何かをしようとしている自分にびっくりした。
ウエルカムベアは、思ったよりもてこずり、最後は徹夜で仕上げをした。
妹が思いのほか喜んでくれて、気持ちが満たされるのを感じた。人のために何かをするということは、自分を満たすことに繋がることをまた実感した。
それから、東日本大震災が起こった際、仙台に住む両親にプレゼントを贈った。
実家では、地震から1ヶ月が経っても、ガスが復旧せず、電気だけで料理をするしかない状態だった。電子レンジで簡単にいろいろ料理できるように、シリコンスチーマーとレシピブックをプレゼントした。さらに貝柱や干物など、父親の好物の酒のつまみも贈った。
震災により生活が不自由なこともあり、両親はすごく喜び、感謝をしてくれた。
両親が自分に感謝してくれたことで、自分の中にあった両親に対する確執みたいなものも、少し和らいだ気がした。
今まで両親には厳しく育てられたため、両親に対して素直に感謝するということが出来なかったのだが、このことをきっかけに、だんだん「両親も若かったし、パーフェクトな親なんていない」と思えるようになってきた。
両親に対して思っていた「親だから……すべき」、「親だから……であるべき」、「親なのだから……して当然」という思い込みがあることに気づいたからだと思う。
セッションの5thステージ、人のサポートをして喜んでもらうこと、両親に感謝することも自然の流れとして、出来ていた。
そして、2011年8月。1年5カ月続いた、堀口コーチのコーチングを終了することにした。
当初目標にしていた「転職」というゴールは達成できていなかったが、好きなこと嫌いなことが明確になったし、自分を好きになることが出来た。何より人生が楽しくなって、自信もでてきた、それだけで十分だと感じたからだ。
コーチングを受ける前の私は、理想の自分像をつくり、理想と現実の自分を比較することで、まだまだ出来ていないと自分にダメだしすることが多かった。それはそれで、ゴールを目指して頑張るエネルギーとなってはいたが、自己否定が多くて、自分に自信をもてなくなっていたのだろう。
コーチングを受けて、自分のことをよく知り、理解するにつれて、自分の良いところ、そうでないところも認識できた。そんな、ありのままの自分を、まるごと受け入れることを学んだ。自分を受け入れることで、自然と自分を好きになれた気がする。
コーチングが終了してから2週間後、社内異動の通知を受け取った。
当初希望していた人事部とは別の部門であったが、今までの技術の知識や知見を活かせ、興味を持てる部門であり、女性が多く過ごしやすい職場への異動が決まった。
異動してみたら、仕事が楽しくてしょうがない状態になった。好きなこと、興味があることを仕事に出来るということは、本当に幸せなことだと感じている。
さらに異動してから1ヵ月後、昇進した。
ずっと願ってきたことが、この1ヶ月であっさり叶ってしまったことに、本当にびっくりだった。
遠回りかもと思えることもあったが、しっかりと自分を見つめなおすことで、本来の自分がわかり、自分らしい状態で過ごせる道を選べるようになった。それが、今の幸せに繋がっていると感じている。
こうして、『ひとみずむ』を書きながら振り返ってみると、ひとつひとつ自分の心に問いかけていく漢方薬的なコーチングだったからこそ、こうやって自分の心にしっくりくる状況に落ち着けるようになったのだと思う。
自分と対話をしながら少しずつ進んでいくことで、自分がやりたいことへ近づけるようになったと感じている。
堀口コーチにちょっとずつ背中を押してもらいながら、段々と、人と関わることを増やした。人との関係を通じて喜びを感じ、また感謝されることで、自分の役割を理解していくのだと実感した。
このタイミングで出会えた人、起こった出来事、そしてずっと私の周りにいてくれたすべての人に、「ありがとう」を伝えたい。
これからは、もっと自分らしく生きていける、そんな気がする。