Twitter Facebook

見えていなかったもの

48 AKO

 ゴールデンウイークも終わり、忙しさも一段落した。モヤモヤした気分で毎日を淡々と過ごしていた。忙しいのは好きだけど、その忙しさで自分を見失っている気分だった。
 モヤモヤするあまり、何か浮上するきっかけにならないかとビジネス書を読んだりもした。そんなものにまで手を出し始めている自分って・・・・・という気分で、本屋さんのビジネス書コーナーで虚しい気分になった。

 なんで自分は店長の仕事をしているんだろう。店長なんて別になりたくなかったのに・・・・・。店長の仕事の楽しさは分かるけど、理想の店長って何? みんな、なんで店長なんかになりたいと思うのだろう・・・・・。

 日頃、あまり接することもないマネージャーとの面談が迫っていて、今のままだと良くない結果になるのは分かっていた。
 店長のすばらしさなんかを語っているものを読むと気分が変わるかも。
そう思って、『店長』『理想』『カリスマ』で検索した。

 そして、堀口さんに出会った。
マクドナルド×アパレル=うちの会社っぽいな。
そう思って堀口さんに興味を持った。

 ブログを読んだり、『ひとみずむ』を読んだり・・・・・。ブログからは堀口さんのポジティブな感じがすごくまぶしい印象だった。自己紹介の堀口さんの写真がすごく好きだった。
「こんなふうに毎日楽しそうに自信を持って話せていたら良いな」と思った。

 『ひとみずむ』の中の店長シリーズを読んだ時は、店長なのにプライベートもこんなに充実してるのすごいなと、ひとみずむを書いている人を羨ましいと思った。気持ちがほっこり、ちょっと元気がもらえた感じだった。自分もこんな風になれたらいいなと思った。

 6月。特にそれまでとかわりのない状態でマネージャーと面談。案の定、結果は最悪。私はまたかなり落ち込んだ。

 その頃、『かないずむ』読みましたか? のリマインドメールが届いた。ダウンロードの申し込みをしたけど届かないなぁっと思っていた。後から見たら、迷惑ボックスに振り分けられていた。
 今、このリマインドメールが来たってことは、何かのお導き的なやつだな! と前向きに捉えて『かないずむ』を読むことにした。

 『かないずむ』を読んで号泣した。
セラピー・カウンセリング・コーチの違いを知って、今の自分に必要なのはセラピーだなと思ったことが一番の印象だった。
 この、今の落ち込んでいる自分をきちんと受け入れて、前向きになれるようになってから、次の段階に進めばいいのだ。そう思って、ちょっともがくのをやめた。

 ちょうど、お店も異動時期の休暇シーズンだった。うちの会社では、半年に一度大幅な人事異動がある。この時期は、有給休暇もとりやすい。今年も休みをとり、のんびり旅行して気分転換をした。
 
 休暇中、改めて堀口さんのブログや『ひとみずむ』を読んだ。堀口さんと一緒に仕事をすると成長できるだろうな・・・・・。その人の能力を引き出してあげられるってすごいな・・・・・。
 人に感謝されるっていうのはやっぱり、何よりの喜びになるんじゃないのかな・・・・・。

 私は『一緒に働けてよかった』と言われる店長になれたら良いなと思った。
もがいていたが、理想の店長像が一つ見えた。

 8月。社内で異動の内示が発表された。私の異動はなかった。今の店舗への残留が決まった。直属の上司も変わらない。
 これでは、自分自身が変わらないと、前の半年と結果は何も変わらない。自分が成長するきっかけは自分を変えるしかないのだ、と思った。

 
 毎週届く『読むサプリ』は嫌いなビジネスメールなはずなのに自然と読める。
堀口さんのメルマガに登録してちょっと店長の勉強することにした。『カリスマ店長7つの秘法メールセミナー』に登録した。
 すると、前みたいに落ち込みにくくなった。毎日、いろんなことを少しずつ試している気分だった。
 メルマガだけでこんなにすごいなら、実際にコーチングを受けたら更にすごくなるんじゃないか?? このメルマガが終わったらコーチング、申し込んでみよう!
 また、『ひとみずむメールセミナー』の課題の中に毎日起きて欲しい奇跡を書くというのがあった。考えることを寝る前の日課にした。

 今度は店舗巡回の時期が迫っていた。
巡回前の最終チェック、「こんなんじゃダメでしょ」と上司からは否定された。
うーん。落ち込む。みんなで必死にやっているのに、なぜそんなモチベーションの下がることを・・・・・。

店舗巡回の前日の夜、「明日の奇跡」を考えたとき、もちろん明日起きて欲しい奇跡は、「店舗のA評価がもらえること!」。みんなで頑張って作った売り場だし、気づいた不備は全部直しきったし。あとは営業中の状況だけだな!

 ノートに書いていくうちに、何故か自信が湧いてきた。やれることは全部やったし、明日はみんなのモチベーションを上げて、楽しく売り場に立ってもらうことだけに集中しよう! そんな前向きな気分で店舗巡回に挑んだ。

 結果はA評価。何よりびっくりした。
 すごい、本当に奇跡が起きたよ。

 叶うかなーと思いつつ、願う奇跡を書く。その奇跡を叶える為にはどうすればいいのか、自分の行動まできちんと考えるようになったからだと思った。

『堀口さん効果ってすごいな・・・・・』ますますコーチングを受けたくなった。

 でも、今の自分だけでどれだけやれるか試してみたい気持ちもあった。今回起きた奇跡みたいなことはまた起こるかもしれない。自分でどこまでやれるかやってみよう!

 それまでと変わらず、堀口さんのブログ、メルマガを読み、自力でやる日々だった。
でも、ちょっとA評価がもらえたことで気を抜き始めている自分にも気づいていた。
またモヤモヤし始めていたのかもしれない。

 月曜日の寝る前は堀口さんのメルマガを読むのが日課だった。
考える体力、私が今一番欲しいものなんだよなー。って、え? 10月最初なのにもう10月の枠はラスト1枠?? これは今を逃したらチャンスがもうなくなる??
 寝る直前だったのに、あわててPCを再起動。90日コーチングを申し込んだ。

 90日コーチングのオリエンテーションが始まった。
「こんばんはー」。堀口さんは自分のイメージ通り、はきはき話す女性だった。
仕事だし、ちゃんとしないと! の気分ですごく緊張していたのを良く覚えている。

 うちの会社は、多分、誰もが知ってる有名な会社だ。世界に出て行けるチャンスもあるし、教育システムもマニュアルもしっかりしているところなので、自分が成長できそうだと思って4年前に新卒入社した。
 今までは目の前のことをその時その時、必死にやってきて、無事昇格できていた。
もうすぐ、もう1ランクアップの昇格チェックがある予定だった。私の希望の海外がちょっとずつ近付いていた。前回のチェックでは、こだわりがない、考えが浅いと言われた。私自身の強みが見えてこない、と評価されたのだ。

 そこで、堀口さんとのセッションを通して、自分らしいお店づくりができるようになることをテーマに決めた。昇格チェックでいい結果を出すためには、自分の強みとこだわりが、外からでもわかるようにしていくことが課題だった。

「どんな店長になりたいんですか?」
「みんなから感謝されるような店長になりたいと、『ひとみずむ』を読んで思ったんです」
「なるほど。じゃあ、みんなが自主的に動くようなお店づくりが必要ですね。今、どんな店長スタイルでやっているんですか?」
「自分が指示を出して動いてもらう感じです」
「指示出して動いてくれるのも凄いですけど、みんなYESマンな感じなんですね。(笑)」
「うーん、そうですね~(笑)」
(YESマンってその通りだな。軍隊みたい・・・・・)

 話は、今まで会社でどんな成長をしてきたか? になった。
「もし、他社からしたら、どんな評価が貰えるんでしょうね」堀口さんにそう聞かれて絶句した。
正直、分からなかった。そんなこと今まで聞かれたことなかった。

「今の会社以外での評価なんて、考えたことはなかったです」と素直に伝えると、
「Akoさんは、たとえて言うなら、鳥カゴの中にいる感じですね。(笑)」と言われた。

『鳥カゴ!!??』

はっきりとビジュアルが浮かんで、びっくりした。
だけど、ものすごく納得した。その通り!!

 朝起きて、仕事して、帰って、ご飯食べて寝る。その繰り返しだった。ほとんど生活の中心が仕事だった。社内の情報、店舗の中で精一杯で他に目を向けることはしていなかった。目を向けても自分の好きなことだけ。そこからどこかへ繋がるなんてことはなかった。

 1回目のセッションの前に、考察のための質問集が送られてきた。
「なぜコーチを雇うのでしょう? コーチの私に何を期待しますか?」
 この質問にはすぐに答えが思い浮かんだ。

「このコーチングの関係で、私はあなたに何を期待できるでしょうか?」
 そんなこと、考えてもいなかった。自分のことしか見えていなかった。

「あなたの人生の目的、使命は? それを守るためにやっていることは? あなたが貫きたいと思っていることは?」今まで、こんなこと本気で考えたことは、なかった。
 目の前のことを楽しく、ひとつひとつクリアしていけば、自ずと自分の理想に近づけると思っていた。でも、そんな自分の理想、自分のこともよく見えていないことを自覚した。

 回答に悩みはしたけど、ここでウジウジしても仕方がない。中途半端でも、セッションまでに間に合うように回答が出た時点で送ってしまえ!
この、浅はかな考えも私自身だし、こんな浅はかさも改善したいところなんだからしっかり見てもらった方が良いだろうと。そう思って堀口さんとのセッションに臨んだ。

 1回目のセッション。質問集の考えが進まなくって浅はかだなと思いつつ、堀口さんに送ったことを素直に伝えた。

「そうですね・・・・・。色々な人がいますが、正直、答えは短いほうですね」と、堀口さんは、ばっさり言ってくれた。
「そうですよねー。やっぱり・・・・・」そう言われても、嫌な気分ではなかった。
ここで、お世辞的に「そんなことないですよ」とか言われていたら、多分続きのコーチングは受けていなかったと思う。

 でも、そこでこのことについては終わり。これ以上、浅はかな思考について触れられることはなかった。あれ? この浅はかなところとか改善すべき課題とかではないのか??
 突っ込まれると思ったのに予想外だった。不思議な人だなー。と思いながらセッションを続けていた。

「セッションの時は、なんてお呼びしましょうか?」と質問された。
そこでふと、私は店長になってから自分の名前で呼ばれなくなっていることを思い出した。
 最初は『店長』って呼ばれるのが嬉しかった気はするし、今もお店で呼ばれるのは気にならないけど、プライベートでも最近知り合った人はみんな『店長』と私のことを呼ぶ。みんなの『店長』じゃないのに・・・・・。いつから私は『店長』って名前になったんだろうと思っていた。

 堀口さんは店長時代、『店長』って呼ばれていなかったらしい。意外だった。サバサバしてそうで、頼りがいがあって、堀口さんは私のイメージする『店長』のイメージだったのに・・・・・・。
 堀口さんに改めて呼び名を聞かれることで、自分の希望した呼び名で呼んでもらえることで、きちんと自分を認識してもらえた気分だった。

 その後は仕事の話になった。
「スタッフの人たちはどう動くことが理想ですか?」と聞かれた。

 私は、いつも、指示を出し、その結果をフィードバックする。良い結果なら良いけど、悪い結果の時はもちろん、否定することが多い。いつも「私の指示に従うばかりで楽しいのだろうか?」「もっと自分でやりたことはないの?」と、思っていた。スタッフに対して、自発的に行動することを私は望んでいた。

「みんなにそのことは伝えてますか?」
「うーん、伝えてないです」
「もし、スタッフがこうしたいと、アイデアを言ってきたら聞き入れられますか?」
「聞き入れるようにすると思います。その、こうしたいを一緒にかなえられるように取り組むと思います」

(って、聞き入れるようにするって時点で今は聞けてないよな?)

「これからどんなアプローチをしますか?」
「自分から聞くとか? でも、意見を言うようになるかな??」

(というか、今のスタッフは意見を言ってくれるのか?? そんなこと考えてないだろうに・・・・・)

「でも、最初は考えることに慣れていないだろうから、言うまで時間もかかると思うので、相手も考えられるようになると、信じて待つことですよ」
堀口さんは続けた。
「今、指示型になっているから、店長に意見を言わないものだという雰囲気になっているかもしれないですよ。そんなときは、意見を言いやすいように役職とかを与えるのも良いですよ」

(なるほど!!)

「役職とかなら、その人の適性とかもありますよね?」
「そうですね。こちらから、しっかりスタッフを見て、見えてきたら任せられそうですよね?」

 次のセッションまで2週間。やることがはっきりした。まずは自分の望み、スタッフからも発言が欲しいことをきちんと伝える。そして、スタッフを良く見て、そのスタッフにあった適性を見つけること。

 やるべきことが明確になると、どんどん自分の行動を進められた。
出勤してすぐ、代行者に私の願いを伝えた。こうして欲しい、こんなことしたい! の意思はみんなにはないの? 私はその意思が見たいし、聞きたいのだと。

 今まで店舗を出たら即解散の雰囲気だったのが、ちょっとずつ話をするようになった。
このスタッフはこうだったよな。このスタッフはここが弱いな。このスタッフにはもっとこうして欲しいのに・・・・・。

 みんなを見ていたら、思うことがいっぱいあった。うちのスタッフは個人で頑張るよりも、チームにした方が進み出しそうな気がした。
 今の店舗の強化したいところは、CS(お客様満足)。個人に働きかけていても中々成果が出ないし、チームでやってみようかな、と思った。

 早速、自分の思い付きをスタッフに説明した。賛同も得られたので、すぐさま店舗をチーム分けして、楽しんでやれるようにとゲーム性を持たせて店舗内で競い合うようにした。     
 店舗を細かくチーム分けして、チーム内でお互いを評価し、助け合う。店舗スタッフみんなに発言するのに比べたら、規模が小さい分、意見も出やすいだろうと思った。そこで自信がつけば、積極的に意見を言ってもらえる様になる?? なんて希望もありながら・・・・・。

 細かくチーム分けしたことで、今回初めてリーダー的役割をするようなスタッフも誕生した。もちろん、初めてのリーダーは張り切ってくれた。「こんなことしてはどうだろう?」「こうしてみたらお客様に喜んでもらえた!」と、今までになかった他のスタッフへ働きかける場面に出くわした。

『これ! 私はこれを待っていたんだよ!!』
『私からだけでなくみんなで教えあって欲しかったの!!』
すごく嬉しかった。自分の理想にちょっとずつ近づいているようだった。

なのに来た、上司からの批判。
「そんな取り組みは本質ではない。そんなことやっても意味はない」
全否定された。

 前向きだったのに。みんなで頑張っていたのに。良い雰囲気だと思ったのに。
私は自分が否定されたことで頭がいっぱいになり、この上司をいかに説得しようかと考え始めた。

 そんな時に次のセッションがやってきた。もちろん、堀口さんに聞きたいことは『上司を説得するヒント』だ。

「こんばんはー。進んでますね! で、今日は上司を説得するヒントですか? いつもはどんな感じなんですか?」
「否定されることが多いですね。売り上げも上げているし、エリアの中で結構利益も出しているのに見てもらっていない感じがしています。その点は何も言われないから、見てもらってるかどうか謎ですね」
「上司は、利益が出てることに触れないんですね。じゃあ、自分を客観的に見ると上司にどう映っているんでしょうね?」

(そんなこと考えたこともなかった。自分が上司に対してどう感じるかだけで終わっていたな。・・・・・自分のことしか見えていなかったんだな)

「うーん、扱いづらいやつだと思われてる気がします」

(女性店長だし、男性上司は扱いづらいだろうな。私も正直苦手だし・・・・・)

「え! 扱いづらいのはどんなところが?」
「扱いづらいと思われているのは上司の問いにすぐさま答えを出せないところ? 私のレスポンスが遅いところ? 私自身は上司の問いに対して考えていても、その間のアクションがないから上司には考えている時間が止まっているように見えると思うので。で、その間にいろいろ言われて、私は分けがわからなくなるんです。あと、上司と会話している時に考えているのも、日頃から考えられていないっていうので、もっとよく考えろって言われますね。とりあえず上司と話している時はメモを取るのに必死です」
「メモ?」
「メモです」
「そんなにメモを取らないとダメなんですか?」
「うーん、メモを取らないと忘れてしまう?」

(というか、人の話は何回も聞き返さなくて良いようにメモを取れって教えているし、教えられてきたからやっているだけだな)

「メモしている間、ちょっと待って下さいとか言えないですかね?」
「言えますね」

(何で私、言わなかったんだろ・・・・・)

「会話は、キャッチボールになってます?」
「キャッチボール?? 出来てない気がします・・・・・。上司に『話は伝わっているのかな?』って聞かれたりしますね」
「なるほどね。ってことは、上司も不安なんですよ」
「不安なんですか・・・・・」

(私だけが上司に言われてへこんでるのだと思っていたのに)

「こちらも上司の言うことを『なるほど』とか『そうなんですね』で承認しないと!」
「あー、私はそんなことせずに必死でメモをとってますね・・・・・」
「メモはやめて、分からない時は分からないとその場で伝えたりして、『こう聞こえましたけど、あってますか?』とか、聞く力をアップさせることを意識できるといいですね」

 堀口さんと話をすることで、自分の日頃の行いがよく振り返れた。
自分が体験している場面では何にも思わなかったのに、振り返ってみると上司と私の会話はおかしな光景だと思った。
 
 今思えば、スタッフを見ていたはずなのに、何故か上司を見ていた。この辺からおかしくなっていたのだと思う。
何してるんだろう私って・・・・・。そんな気分ですぐさま自分の行動を改善したくなった。

 まだ、セッションの時間はかなりあまっていた。
私はそのテーマしか考えていなくて、次の話に困っていた。
そうしたら堀口さんが質問をくれた。

「じゃあ、月の初めだし、今月はどんなことをしたいのか? とか、明日の1日をどう過ごすのか? とか、そういうのでもいいんですよ」
 そう言われて、翌日の新人スタッフの初めての週末売り場デビューのことを思い出した。

「新人スタッフには、どうなってほしいんですか?」
「はやく売り場に慣れて欲しいですね。とにかく週末は慌しいので・・・・・」
「では、その為に何が必要なんでしょうね?」

 新人スタッフの1日の達成目標を決めること、その目標を他のスタッフへも共有すること、新人さんが困った時にどうしたら良いのかのちょっとした対処法の3つが具体的になった。やることが明確になると、それをやってみるとどうなるか、結果がとても楽しみになった。

 翌日は出勤後すぐに、「今日はこんなことを企んでいるんだよー。どう?」と堀口さんと決めたことをスタッフに説明。実行に移した。

 新人スタッフの達成目標、それをクリアするための動きを細かくスケジュールに落とし込んだ。そして、スケジュールをみんなに共有してフォローをお願いした。やることが明確なので自ずと行動も進み、新人スタッフはとても頑張ってくれた。
また、新人スタッフだけでなくサポートする側の私たちも、具体的にアドバイス出来るので、スムーズにフォローすることが出来た。

 大成功。新人さんの売り場デビューは、過去最高の出来だった。

 上司と話をする機会もあったので、早速改善をした。
話をするときのメモをやめて、会話に集中。キャッチボールを意識。当たり前だけど、きちんと相手の目、表情を見て話をした。
でも、不安もあるので最後に「結論、こうですよね?」と確認のうえ、結論だけを「ちょっとメモさせて下さい」とメモした。

そうすることで、なんと上司の話し方まで変わった。

「そうそう、言いたかったのはね・・・・・」と、今までにない口調で結論をくれた。気持ちよく会話が出来た。上司の言うことをすんなり聞き入れられた。

 堀口さん効果すごすぎ。
 やってみたら、どんどん良い方向に進んでいく!!
 この調子で行けばすごいことになるぞ!!!!!

と、私は調子にのってどんどん突き進んだ。
 
自分が進むだけでなく、周りのスタッフにも同じように進むよう要求した。ひたすら前しか見ていなかった。気温も下がり始めたり、大きな打ち出しを控えていたりでお店の忙しさはピークに達していた。もちろん、自分に余裕なんてない。がむしゃらにやっていた。

「なんでこんなミスするの??!!」
「そうじゃなくてこう!!」
「そうじゃなーい!!」
スタッフにイライラして、感情的になってしまうことがあった。

なんで、わからないの?
こんなに必死にやってるんだから結果出したいでしょ? もっと頑張ってよ!
そんな気分だった。

 仕事終わりの店舗の外。いつも通り、スタッフと今日のプチ反省会。・・・・・だと思ったのに。

「店長、・・・・・・・・・」。
 
すごくショックなことを言われた。
自分の行動、言動を改めなければ店舗が崩壊してしまう・・・・・。そんな気分だった。
一気に私のテンションは急降下した。

 コーチングを始めると、こんなにもいろいろ起こるものなのかとびっくりした。
あんなに淡々とした毎日だったのに・・・・・。コーチングを受け始めたこととか誰にも言ってないのに・・・・・。状況は何にも変わってないはずなのに・・・・・。何が前と違うんだ? こんなに喜怒哀楽って日常ではっきりするもの?? そう思った。

 スタッフに対して日頃から感謝の言葉を伝えることが、不足していた。
仕事なんだから・・・・・、やってもらって当たり前・・・・・、そんな風に考えてしまっていた。自分に余裕がないと求める一方になり、感謝する気持ちをすっかり忘れていた。常に感謝する気持ちが持てるように、心の余裕はどうしたら常に持てるんだろう・・・・・。
 感謝することが大切なのは分かる。『ねぎらう』の言葉も知っている。でも、正直、『ねぎらう』って何?? 仕事だから、やるのは当たり前のことでしょう?? なのに、ねぎらって貰えると思っているのか??

 早速、セッションの時に堀口さんに聞いてみた。
「『ねぎらう』ってなんですか? どうやるんですか??」
 まず、自分が店舗でスタッフにどのような言葉を発しているのか現状を聞かれた。
「日頃、スタッフに対してねぎらう場面はどんな場面ですか?」
「指示した仕事をやってもらったときですね」
「仕事の指示はどのようにしているのですか?」
「まずは何でやってもらうかの目的を説明して、具体的に手順を説明して、合間に確認もして、完了したタイミングで出来ていないところをフィードバックして改善してもらってますね」
「Akoさんが、逆の立場でそのようにフィードバックされるとどう感じますか?」
「たぶん、ダメなところがはっきりしているので、そこを改善すれば大丈夫と思って改善しますね!」
「なるほどね。Akoさんは、前向きですねぇ。でもそんな人ばっかりじゃないですよ」
「・・・・・えっ?」

(前向きって何が???)

 謎だった。今まで、私自身、前向きだとか楽観的だとか言われていたけど、自分では納得していなかった。言われたことにはウジウジ悩むし、落ち込むこともいっぱいなのに!
ただ、前向きだと言われても良くわからなかった。

「ネガティブなフィードバックを受け入れられるのは、その弱点を克服して更に強化したいと思っているからですよ。自分の弱みを改善したいと思っているからこそ受け入れられるんですよ。そう考える人はやっぱり伸びますけどね。だから、店長にもなっている。でも、いろいろな伸び方がある、みんながみんなそうじゃないんですよ」

 分かるような、分からないような。納得できたような、出来ていないような・・・・・。

 堀口さんは私とのセッションのことをブログに書いていた。
ブログを読んでストンと堀口さんの言っていたことが自分の中に落ちてきた。
=============================
【抜粋】
リーダーは、いろいろな考えを持つ部下がいることを知ることは大事です。その部下に必要な言葉がけがあると考えられるようになると、コミュニケーションは、本当に円滑なものになっていきます。たぶん、その店長さんは、ダメ出しを受け入れるようにして、成長の糧にしているというのは、ただの前向きなだけでなく、「自分は、リーダーシップのスキルをもっと伸ばしたい」と思っているからこそ、ダメだしを歓迎できると思うのです。強みと認められているところがあってこそ、強みの中の弱点の克服なのではないかと、このセッションで話しながら私も色々気づきました。
実際のブログ:http://horiguchihitomi.livedoor.biz/archives/51966488.html
==============================

同じことを伝えても、同じ言葉でも聞き手によって受け取り方は様々。
それはその人その人で克服したいことが違うからなんだ。

自分が求めていないことで嫌なことを言われたら、もちろん拒否する。
自分が求めているフィードバックだからこそ、どんなものでも受け入れられるのだ。

そう思えたのも、しっかりと堀口さんがブログで私の強みを最初に伝えてくれていたから。強みは人それぞれ。その強みをしっかりと伝えていくことが大切だと思った。

みんな違うんだから、自分と同じことを求めるのは間違っていると思えた。
今まで言葉・知識として知っていた「みんな違う」ということに、どう対処していけばよいのかが、やっと分かった気がした。

 ここから、スタッフに対して、他者に対して、私はイライラしなくなった。
きちんと「自分」と「他人」の感情に境界線が引けるようになった。

 あんなによくわからなかった「ねぎらう」が出来るようになった。
純粋に「ありがとう」が言えるようになった。

 スタッフに対してイライラしている他のスタッフを見ると、
「何をそんなに怒っているのだ?」と冷静に見え始めた。

 自然と心に余裕が持てるようになった。
自分に余裕があると、他にも気付けることがたくさん出て来た。

 今まで、見えていなかったことが見え始めた。

 私の考える時間が増えて、考えていることをスタッフへ共有することが増えた。
何もかもを一人で抱え込み、自分の力だけでどうにかしようと思っていたことが少し減った。

 そう、私は今まで一人で抱え込むあまり、変なことをしていた。
セールスの割に駐車場が少ないうちの店舗。その駐車場不足はクレームにも発展していた。そこで、私は必死に臨時駐車場に出来そうな場所はないかと探していた。近くに住んでいるスタッフからは店舗周辺の空き地情報を聞き出したり・・・・・。
 スタッフにそんなことを聞く前に、他に聞くことがもっとあっただろうに。

「わ、ははは! それ店長の仕事の範疇超えてますよ! 店舗開発の仕事でしょ。なんで店長が土地探してるんですか?」そう堀口さんに言われるまで真剣に悩んでいた。
「外の土地を探すよりも、今の自分の場所をしっかり耕さないと!」

 ごもっともです。

 店舗の中で改善できることを探した。
レジのスピードアップはもちろん、お客様にも協力していただけるようなことはないか?少しでも短時間で快適にお買い物をしていただくには? など。そして、見つけた一つ一つに対策を講じていった。

 年間最大繁忙月、12月。街中の店舗でもない、郊外にポツンとあるうちのお店。なのに、1億円以上売る目標が私たちの店舗には掲げられていた。
 1億売ったお店の店長、かっこいいからなりたいなぁと漠然と思っていた。去年はあと200万のところで1億に届かなかった。

 堀口さんと私の90日コーチングは、12/26で終了した。
翌日、堀口さんがコーチングの総括をブログに書いてくれて、今後の課題が明確になった。
==========================
 【抜粋】
 セッションの1,2回目は、部下の動きでイライラすることが結構あって…というお話しをしていたのですが、今はイライラすることはすっかりなくなって、「指示型」もだんだんと弱めて行けている雰囲気にはなっているようでした。しかし、まだ本格的に自発的ではないようなところがあるように感じているそうで…。
 現在、部下にはどう接しているのかと聞けば、仕事をお願いする形をとっているそうです。お願いという名の指示型でした。指示型を脱しているつもりが、そうでもなかったようです。(笑)
 相手が考えようとしていたのに、先に決められちゃうと、それ以上考えることを辞めてしまったりします。なので、何かを一緒にするときには、相手にも「余白」を作ることが大切なのではないかと思うのです。
 相手の考えが思いつくまで「待つ」こともそうです。これから初めて考えたり行動したりする部下にとっては、考える時間も必要です。時間を作ってあげることで、部下の考えを引き出すことも上手くいくでしょう。
 その店長は、「指示型」から、「お願い型」を経由して、今こそ「自主活性型」へ向かっているんだなぁと、3ヶ月のセッションが、深いところで進行していたことを、最後に感じました。
 1億円、突破するとかっこいいなぁ!
実際のブログ:http://horiguchihitomi.livedoor.biz/archives/51980693.html
=======================

 1億円まであと少しのカウントダウン。
この状況をスタッフにも共有した。毎日の売り上げは気にしていても、月間トータルでそんな金額になっているとは思っていなかったようでみんなびっくりしていた。

「あと5日なんだよ! 私たちならやれるはず!! 頑張ろうね!」とみんなでテンションを上げた。
「今日の目標まであと28万円! 営業時間も少ないですが、売り場に疲れが見えてきてるので元気よくいきましょー!」

 私以外にも呼びかけてくれるスタッフはたくさんいる。
みんなが1億円に向かって頑張っていた。

 そして、2011年も終わり、結果が出た。
堀口さんにも報告をしなくては! と、新年明けて、堀口さんにメールした。

========
堀口さんへ
あけましておめでとうございます!
昨年は本当にありがとうございました。
2011年は、堀口さんに助けられた1年でした。

実際に堀口さんのコーチングを受けるまで、
私には迷いの4ヶ月がありました。
が、読むサプリの『今月あと1名』の文字を見て、あわてて応募しました。
その記憶は鮮明に残っています。
その場で、即行動して本当に良かったです。
10月からの3ヶ月間は充実した濃度の濃い3ヶ月でした。

と、話は飛びますが、最後のセッション時、
堀口さんも気にしてくれていた1億円の売り上げ、無事突破できました!
というか、12月の売り上げ予算がクリア出来ました!!
店舗での単月売り上げ過去最高額です。
これも店舗のスタッフの協力あってこそなのですが、
私自身が堀口さんに助けてもらえたこともかなり大きいです。
本当にありがとうございました。
この自分の中の良い流れをしっかり次に繋げていきます!
これからも、どうぞ、よろしくお願いします。

========

Akoさんへ
こんばんは。メールありがとうございます。
すごいです! 一億円! おめでとうございます!
お疲れ様でした。充実した3ヶ月だったようでよかったです。
ところで、Akoさん、今回に書いてみませんか? 『ひとみずむ』。
成果もでたばかりで、勢いでエイっと。
ご検討くださいね。お返事お待ちしております。

========

 2012年元旦の堀口さんからの質問付き年賀状にあった『2012年、叶ったらいいなと思うことは?』の答えの一つに「ひとみずむに寄稿すること」と私は書いていたのだ。
また一つ、自分の願いが叶った。

 成果は一つ出たけど、まだまだ私の課題はいっぱいある。
ただ、課題に向き合う時の私は今までとは違う。客観的に自分の事を見られるようになったのだ。

 鳥かごの上から、店舗を見ている。

 今後がどうなるのか、すごく楽しみだ。